三原市水道部
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ろ過池が緑色の藻で一杯になる
 河川水を取水している浄水場では,雨が降ると河川水が濁り,どうしても泥がろ過池に入ってしまいます。ろ過池の砂層の表面に泥がたまるので,時々その泥を削りとらなければいけません。河川水の濁り対策のために,濁りを沈めるための沈殿池が大きい場合,ろ過池は目詰まりしにくいので長く使えます。また,河原に埋設した集水管で伏流水を取水する場合,濁りが無いので,ろ過池はほとんど目詰まりをせず,非常に長く使えます。

 ろ過池で最初に繁殖する藻は,珪藻です。珪藻は緑色の葉緑素の他に,赤茶色のカロチノイド色素も含まれているので,茶色に見えます。珪藻は珪酸質の殻がありますが,水生昆虫の幼虫や微小動物のエサとして最良で,動物が珪藻を食べると簡単に消化されてしまいます。ろ過池では珪藻が食べられてしまうと,動物が食べにくい糸状の緑藻が繁殖しだします。長くろ過を続けられるろ過池は,緑色の藻が繁茂するのが普通です。茶色の藻から,緑色の藻にかわるのは,茶色の藻を食べる動物が増えるからなのです。

 動物は変温動物で,水温が低い冬は活動が鈍くなり,ろ過池は茶色のままであることがあります。しかし,水温が高くなると動物が活躍し,茶色の珪藻を簡単に食べてしまうので,緑色の藻に遷移してしまいます。茶色の藻よりも緑色の藻の方が植物というイメージがあり,親しみがありますが,光合成をし,入ってくる栄養分を吸収し増えるという意味では同じです。食べられる動物は違いますが,動物のエサになるという意味では同じことです。

 緑色の藻は緑藻で,細胞の外側には固い細胞壁があります。普通の動物は,簡単にはこの細胞壁を壊して消化できないので,長くろ過を続けると緑色の藻が繁茂してきます。

 金魚の水槽が緑色になるのは,金魚が緑色の藻を食べても消化できないからです。緩速ろ過池も緑色になるのは,動物にそうは簡単に食べられないからなのです。糸状の珪藻と比べて,細胞の大きさも大きく堅固です。でも,タニシやカワニナのような貝類は,緑色の堅固な藻を平気で食べ,消化できます。それは,軟体動物には丈夫な臼のような歯があるからで,堅固な緑藻も消化できるのです。畑の野菜をナメクジやマイマイが食べてしまうのと同じ現象です。

 ろ過池が茶色の藻が繁殖しているときも,緑色の藻が繁殖しているときも,ろ過池からでてくる水は「おいしく安全な」水です。砂層上部には,微小の動物が活躍しているからです。森林の樹木の下には落ち葉があります。その落ち葉の間には,いろいろな動物が生息していますね。落ち葉の下の土は小さな団子状になっていて,ミミズなどの動物や,顕微鏡でみないとわからないような,微小な動物もいます。緩速ろ過池の砂層上部と同じような構造で,いろいろな動物が活躍しているのです。植物,動物,細菌などが活躍する層を通過して,山の清水ができますが,緩速ろ過池も同じような現象が行われています。

 緩速ろ過処理は,自然界の生物現象の上手な活用で,化学薬品を一切使わないで,おいしく安全な飲み水にできる方法です。

図1:ろ過池に入ってくる水に濁りがないときは,最初に糸状になる珪藻のメロシラが真綿状に大繁殖をする。
図2:水面に浮いた藻が効果的に排出されないときは,ろ過池で腐ったりする。また珪藻は動物のエサとして最適で,食べられると糸状の緑色の藻になる。
図3:ろ過池を使い続けると,水面に浮いた藻と一緒にユスリカの脱皮殻が多数みられることがある。ユスリカは刺さない蚊として有名である。珪藻などを食べて増える。
図4:ユスリカが増えると,砂面では糸状の珪藻は食べられ,食べられにくい糸状の緑藻が繁殖してくる。
図5:そのような時にろ過池の水を抜いてみると,砂層上部にはユスリカの幼虫が多数いるのがわかる。目立つのは,ユスリカの幼虫(矢印)。糸状珪藻が食べられても,砂層上部には多数の微小動物が活躍するので,ろ過池は目詰まりもしないし,ろ過した後の水は濁り物質はほとんどいない良質の水道水である。
図6:ろ過を長く続けられると,ろ過池に浮いている藻は緑色になることが多い。
図7:緑色になった状態のろ過池の水を抜いてみると,糸状の緑藻であるのが良くわかる。
図8:緑色の藻は,簡単に手で持ち上げることができる。アオミドロ,シオグサ,サヤミドロ,アミミドロなどの糸状になる緑藻である。このような糸状の緑藻は,水田でもよく見られる。
図9:ろ過を長く続けると,緑色の藻も食べることができるタニシ,カワニナ,シジミなどの貝類もろ過池にはでてくる。
プロフィール
中本信忠教授 中本信忠教授
(NOBUTADA NAKAMOTO)
<略歴>
1965年東京都立大学理学部卒;1968年東京都立大学大学院(理学研究科)修士課程修了;1971年東京都立大学大学院(理学研究科)博士課程修了;1973年日本学術振興会奨励研究員終了;1975年信州大学助手;1981年助教授;1990年教授


<研究の概要>
緩速ろ過処理およびろ過池の生物被膜の生物群集に関する研究(ろ過閉塞と藻類繁殖,生物被膜,糸状藻類繁殖の有用性,水質浄化能,ユスリカ幼虫の捕食と藻類繁殖,藻類繁殖と水質,藻類被膜の光合成活性,有機物 除去と生物繁殖など);糸状藻類繁殖系による水質浄化の研究;河川水質の季節変化および年変化の研究;ダム湖集 水域生態系の研究;河川水中の藻類とその起源に関する研究;バイオアッセイ法による水質評価の研究
バックナンバー
第1回
公共水道の始まりと繊維産業
第2回
緩速ろ過のパイオニア ジェームズ・シンプソン
第3回
モンスタースープと呼ばれたテムズ川の水
第4回
ゆっくり砂ろ過で病原菌が除けていた
第5回
ゆっくり砂ろ過の砂はどんな砂
第6回
上から下へゆっくり常に流れているのがポイント
第7回
緩速ろ過池と藻
第8回
ろ過池の藻が酸素豊富な環境にする
第9回
生物の大きさ
第10回
藻の発達と水深
第11回
生物が繁殖するろ過池では,濁りは砂層に入らない
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