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高台から全景
塩素注入設備上屋
正面から見て右手には庁舎があり,その左隣にまるでプールのような緩速ろ過池が8つ,左手には着水井(ちゃくすいせい)や塩素注入設備があります。
第1回でもお話したように,三原市の主な水源は沼田川の伏流水をひいてきています。ポンプでくみ上げられた伏流水は,強い勢いのまま浄水場へと運ばれてきます。この強い勢いを一度取り除いてあげるのが着水井の役割です。
着水井の外見は,底の深いコンクリートでできた長方形の箱が地面に埋まっているように見えます。その箱の中は二つに仕切られており,1つの仕切りにはたくさんの穴が開いていて,一度くみ上げた水がその穴を通り,隣の箱へと流れる際に,強い勢いが取り除かれる仕組みになっているのです。この水は緩速ろ過池へと運ばれていきます。
着水井仕切りの壁穴
水の入った着水井
中本先生の水コラムにもありましたが,緩速ろ過のポイントは,常に・ゆっくりと水が上から下へと流れていくことでしたね。川から浄水場までくみ上げられ,勢いの強い水のままではせっかくの緩速ろ過池もうまく機能しません。単純な仕組みに見えますが,この着水井のおかげで緩速ろ過池が活躍できるのです。
緩速ろ過池へ水を注入する際にも気を配ります。いきおいのある水を注入すると,何層にも重ねてある砂の表面が水の勢いで流されていき,下の層が露出してきてしまいます。水を受ける場所が井戸のように囲われているのは,それを防ぐためなのですね。水はしずかにろ過池へと注ぎ込まれ,何時間もかけて砂や砂礫の層へと浸透していきます。
穴あきレンガ
このレンガ,レンコンのようにたくさんの穴が開いています。不思議な形で初めて見る方も多いのでは?
ろ過池の中に何層も重ねられた砂や砂礫の層は,細かいものが一番上に,その下からだんだんと粒子が粗いものとなっていて,その最下層に敷き詰められるレンガなのです。
緩速ろ過池注水口
水が入っている緩速ろ過池
水面や水の中に植物や生物がたくさんいるこの池が,本当に水をきれいにしてくれるのか疑ってしまいそうですね。水をろ過するために作られたろ過池ですが,ただ単に生物のいる砂の層に水をろ過するだけでは,人体に有害な物質すべてを取り除くことはできません。ではこのろ過池の役割はどうなっているのでしょうか?
実は水の中や表面に生息するこれらの生物が,私たちにとって有害である物質をえさとして体の中に取り込み,分解してくれるのです。汚れの原因のように見える生物が,安全な水を作り出すために,重要な役割を担っているのですね。
日本では水道法によって,供給水には残留塩素があるものと定められています。
ろ過池を通って出て来た水は,このままでも十分飲むことができますが,西野浄水場大公開!第1回目でご紹介したように,三原市全域に給水し各家庭へと届くまでの間,水も長い旅をします。この間に水の品質が悪くならないように塩素を注入するのです。
塩素貯蔵タンク(チタン製)
そのための施設が,塩素注入設備です。ここで塩素を注入し,十分撹拌した後,大きな配水池へと蓄えられ,やっとお客さまの蛇口から出てくる水のできあがりです!
第3回は浄水池兼配水池,庁舎の電気をまかなう太陽光発電をご紹介します。