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第10回 水と蒸気 ――水で焼ける!?

更新日:2020年2月10日更新

 水には液体、固体、気体の3つの状態があります。前回、水の固体である氷について紹介しましたが、今回は気体の水蒸気について紹介します。

第10回 水と蒸気 ――水で焼ける!?の画像

通常の圧力下で100℃より高温の水蒸気-過熱水蒸気 液体の水を加熱し続けると温度は100℃を超えることはありません。一方で100℃を超えた水は気化して水蒸気になります。
 水蒸気は、そのままなら温度は100℃ですが、発電所の蒸気タービンのように高圧力をかけない、通常の圧力のもとでも温度を数百℃まで上げることが可能です。この水蒸気を「過熱水蒸気」といい、水でありながら、ものを乾燥したり焼いたりできるというのです。

 過熱水蒸気は、工業分野ではすでに研究・利用が進められており、廃棄物の乾燥・炭化、食品の殺菌や食材の焼き上げ工程、コーヒーの焙煎などさまざまな分野に広がっているだけでなく、実は身近な家電製品としても登場しています。2004年に家電メーカーのシャープが発売した「ヘルシオ」は初の過熱水蒸気オーブンで、“水で焼く”というキャッチフレーズが話題になったのを覚えている方も多いのでは。以後、オーブン・レンジに過熱水蒸気を利用した製品が他メーカーからも発売されています。

水蒸気で“焼き色”をつけるオーブン
 過熱水蒸気のオーブンで、すぐに理解しにくいのは「水で焼く」のに“焼き色”が付くことではないでしょうか。オーブンで水蒸気といえばスチームオーブンがあり、ケーキなどをしっとり焼きたい時などに便利ですが、パリッとした焼き色とはつながりにくいイメージです。

 過熱水蒸気オーブンのしくみは、簡単にいえば、庫内を300℃以上の過熱水蒸気で満たして中の食材を加熱するというもの。オーブンの高温といえば大体220℃~230度ですが、先述の各メーカーの過熱水蒸気オーブンの温度は300℃~350度ともっと高温。温度の面からも、焼き色が付いても不思議ではないようです。

 さらに詳しく見ると、このオーブンの過熱水蒸気は、はじめ冷たい食材の表面で100℃以下、つまり水に戻ります。それが、水蒸気とはいえ300℃の高温の中にあるので、食品の表面も温められて100℃を超え、水分が気化して表面がパリッと乾燥していくというのです。乾燥が進めば次第にキツネ色から真っ黒に炭化していくわけですから、焼き色も付くということですね。

減塩・減脂、酸化を抑えて燃焼する効果も
 過熱水蒸気オーブンは、水で焼くことだけでなく、塩分や油分を減らすヘルシーさでも話題を集めました。
減塩のしくみは、はじめ過熱水蒸気が食材の表面で水分となったときに表面の塩分を溶かし、食材内に塩分濃度の差ができることでさらに塩分が外部へ抜けていくというものです。

 油分を落とすしくみは、高温調理で油脂を溶かして落とす通常のオーブンと同じです。ただ、また水は空気よりも熱を伝える力が大きいので、過熱水蒸気オーブンの方が早く食材の内部まで加熱できる分、油脂を解かす量も多いのです。

 また、過熱水蒸気オーブンの特性として、食材が水蒸気で覆われるため、空気つまり酸素も減り、燃焼時の酸化を防ぐという特徴もあります。このため、酸化で失われるビタミンや酵素の損失が少なく、油脂類の酸化も防いで、おいしく仕上がるのも特長です。

 気体の水蒸気の状態でこのような性質をもつ水は、やはり不思議な物質といえそうです。

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